DIALOG 05

アスリート×ビジネスパーソン 座談会

変わらずに大切なもの
サッカーと商社・・・フィールドは異なりますが、スポーツとビジネスの世界には、挑戦やチームプレー、グローバルなど共通の価値観が数多くあります。今回の座談会では、そういった普遍性の高い「大切なもの」について、国内外で豊富なプレー経験を持つINAC神戸レオネッサの選手の皆さんと、同じく国内外でビジネスに従事してきた兼松社員との座談会を通じて、迫っていきます。
*2019年シーズン、兼松はINAC神戸レオネッサのスポンサーとして、全社的にチームをサポートしていくことになりました。
MEMBER
  • 中島 依美選手
    MF 背番号7番
    1990年9月27日生まれ。滋賀県出身。小学4年生からサッカーをはじめ、U-15大阪選抜に選出。2009年にINAC神戸に入団。皇后杯全日本女子サッカー選手権大会優勝6回、なでしこリーグ優勝3回など数々のタイトルを獲得。個人としても、なでしこリーグベストイレブンに3回選ばれている。
  • 鮫島 彩選手
    DF 背番号3番
    1987年6月16日生まれ。栃木県出身。東京電力女子サッカー部マリーゼからボストン・ブレイカーズへ移籍した2011年に、なでしこジャパンの一員としてFIFA女子ワールドカップに出場。全試合スタメン出場して優勝に貢献する。W杯後、モンペリエHSCに移籍。その後、国内チームを経て、2015年にINAC神戸に入団。
  • 岩渕 真奈選手
    FW 背番号10番
    1993年3月18日生まれ。東京都出身。14歳でなでしこリーグ初出場を果たす。FIFAU-17、同U-20女子ワールドカップに出場。2011年、優勝を果たしたFIFA女子ワールドカップでも、予選リーグ、準々決勝、決勝に出場し、優勝に貢献。2012年にドイツへ渡り、2クラブで優勝を経験した後、2017年にINAC神戸に入団。
  • 堀 大介
    所属部署 畜産第二部ビーフ課
    2012年入社
    入社後、食品第二部調理食品課にてコンビニエンスストア向け米飯原料やおでん具材等の販売業務を担当。その後、中国にある合弁食品工場の製品輸入・販売、国内アミューズメントパーク向けアイテムの開発や販売業務を経て、海外実習生として半年間、兼松中国会社上海支店で勤務。2018年10月より畜産第二部ビーフ課に異動し、豪州産ビーフを担当。
  • 横尾 わかば
    所属部署 人事総務部人材開発課
    2012年入社
    入社後、電子材料部にて携帯やPC向け電子部品のメッキ用薬品・部材の輸出販売を担当。海外実習生として兼松中国会社深圳支店に約半年間派遣され、同案件の輸入側の立場として勤務。帰国後、兼松アドバンスド・マテリアルズ㈱へ出向。2018年12月より人事総務部に異動し、研修・中途採用などを担当。

世界と日本との違いを知ることが成長につながる

今朝、神戸から東京へいらしたのですか?
鮫島
いえ。昨日、東京で日本代表チームのメディカルチェックを受ける予定があったので宿泊先のホテルから満員電車に揺られて来ました。
横尾
電車ですか! 周りの人に気づかれたりしませんか?
中島
そんなことないですよ。悲しいくらいに(笑)。
INAC神戸は、『神戸から世界へ』をコンセプトに活動しているチームですし、皆さんは日本代表としても世界で戦った経験を豊富にお持ちですよね。そこで、海外でプレーすることについてうかがいたいのですが、コンディション調整で工夫していることはありますか? 商社の仕事も海外へ行くことが多く、時差対策など、参考にできればと思いまして。
中島
トレーニングと寝る時間で調整するようにしています。現地時間に体を慣らすため、起きているべき時間にトレーニングで体を動かして眠気を追い払ったり。それでも、気を緩めると寝てしまうこともあります(笑)。
横尾
私も堀君も、同じ頃に中国で半年間海外実習を受けていたのですが、鮫島選手と岩渕選手は海外のクラブチームに在籍していた経験がありますよね。
鮫島
はい。私はアメリカ(ボストン・ブレイカーズ)とフランス(モンペリエHSC)に。
岩渕
私はドイツ(TSG1899ホッフェンハイム、FCバイエルン・ミュンヘン)です。
横尾
海外チームへの挑戦を決意した理由は何だったのですか?
岩渕
選手として、もっと成長したかったからです。日本とは異なるスタイルのヨーロッパサッカーを体験することは必ずプラスになるはずだと思いました。実際、文化も考え方も違う、いろいろな国の選手がいるチームの中で“自分を出す”ことが、どれだけ大切なのかということを学べた気がしています。
横尾
鮫島選手はいかがですか?
鮫島
私の場合は、ちょっと特殊でした。2011年当時、(東京電力女子サッカー部)マリーゼに所属していたのですが、東日本大震災をきっかけにチームが解散することになってしまって・・・。その時は日本代表のこともありましたし、一刻も早く練習できる環境に移してあげようと、周りの方々が一生懸命動いてくれたのです。その結果、国内よりも海外のほうが練習に打ち込めるだろうとボストン・ブレイカーズへ移籍することにしました。ですので、周りの方々の気持ちに応えたいという想いがとても強かったですね。
海外クラブでチームに馴染むために気を付けていたことはありますか?
岩渕
言葉も話せない状態で行ったのですが、言葉が分からなくても、食事に誘われたらとにかく行くようにしていました。最初の頃は、ノリとテンションで何とか乗り切っていましたね(笑)。
鮫島
私も異国に受け入れてもらう側だと思ったので、自分から積極的にチームメイトの中に入っていくように心がけました。特に、フランスでは。アメリカの場合は、困っている雰囲気を出すと向こうから声をかけてくれるんですけど、フランスの場合は、自分から発信しないと声をかけてくれないし、助けてくれる雰囲気ではなかったので。もちろん、こちらから積極的に動けば、きちんと応えてくれる仲間たちでしたけれど。それまで、自分から積極的に働きかけるのは苦手でしたが、「それではここで生きていけない」と思い、自分を変えていきました。
横尾
文化や考え方の違いを受け入れながら、その中にとけこむために自分を変えいくのはとても大変なことですよね。それに、単に流されるのではなくて、自分自身の個性をきちんと出した上で、周りに認めてもらうように努力する姿勢は、ビジネスの世界でも大切なことですし、とても参考になります。

創意工夫しながら目標に突き進む姿勢が成果を呼ぶ

皆さんは常に結果を求められる立場だと思いますが、目標を達成するために心掛けていることはありますか?
岩渕
最終的な目標から逆算して、身近な目標を設定するようにしています。タイトルを獲るためには一試合一試合が大切になるので、勝つために1週間の練習をどのように組み立てていくべきか。それをもっと細かくしていって、例えば、1日の生活で、どのような食事を摂るか、体を休めるかといったことを考えています。
鮫島
私もフランスで結果から逆算することを学びました。フランスは日本に比べて非常に練習量が少ないんです。最初は、それが不安で毎日個人的に走り込んだりしていました。でも、その努力は量をこなすことで不安を解消するためのものであって、自分が設定した目標達成につながるものではないと気づいたんです。フランスのチームメイトたちは、週末の試合に向けて結果を出すために何が必要なのかを熟慮した上での練習量なのだと感じましたね。目標達成に必要なことを見定めて、一つひとつの質を上げていく大切さを学びました。
横尾
目標を設定する際に気を付けていることはありますか?
鮫島
なるべく数値化することを意識しています。数値として目標が明確になっていないと結果への繋がりが曖昧になってしまい、満足を得られにくいからです。例えば、私はディフェンスの選手ですがゴールにからみたいと思う気持ちが強いので、「前半のうちにシュートを1本打つ」とか、「(前線への)オーバーラップを何本する」といった目標を設定します。ゴールを決めるというような目標は相手もあることなので、自分の動きで達成できる目標を設定するようにしています。
横尾
具体的な数値目標を設定するというのは、ビジネスでも一緒です。それに、自分が動くことで達成できる目標にするというところは参考になります。自分の努力次第で目標達成につながるというのは、モチベーションを高めることにもなりますよね。
中島選手はキャプテンとして心掛けていることはありますか?
中島
正直に言うと、私はあまりキャプテンらしいキャプテンではないと思っています。自分から選手たちに積極的に声をかけていくようなタイプではないですから。自分に求められているプレーを一つひとつしっかりと着実にやっていくことで、みんなに信頼してもらえればと考えています。なでしこリーグで戦っている選手の多くは、サッカー以外にも仕事をしながらプレーしているのですが、INAC神戸はリーグで唯一、サッカーだけに集中できる環境が整っています。それだけに、サッカーに対して高い意識を持って取り組んでいる選手ばかりなので、自分の役割一つひとつに集中することがチームのためになると思ってやっています。

応援してくれる人がいる
一緒に頑張れる人がいる
だから頑張れる

オフの日は、何をして過ごしていることが多いのですか?
鮫島
オフの前日にチームメイトや友人と食事をしたり時にはお酒を飲んだりすることで息抜きをして、オフ当日は休養に充てることが多いですね。
岩渕
昔は、本当にサッカーのことばかりを考えていましたが、海外へ行ってからサッカー以外の時間も大切にするようになりました。サッカーのことばかり考えていても、うまくいかないときというのは必ずあるもので、そんな時、気持ちを切り替えてリフレッシュする時間も必要だと思えるようになったからです。なので、オフの日は、神戸だけにおいしいお肉を食べに行ったりしています(笑)。
横尾
皆さんが考える優秀な選手とは、どんな選手なのでしょうか?
中島
プレッシャーがある中でも本番で自分の力を出せる選手ですね。
岩渕
私が個人的に思うのは、好不調の波がない選手です。常に試合で100%、120%の力を出せる選手はすごいと思います。私は怪我が多いので、全然できていないんですけど。
怪我のリハビリ中は、焦りや不安を感じますか?
岩渕
まったくないといったら嘘になりますけど、焦ったからといって怪我が早く治るわけではないので、あまり考えません。それよりも、普通に歩けるようになった、走れるようになった・・・など、快方に向かっていると感じられる嬉しい瞬間を一つひとつ集めながらモチベーションを維持するようにしています。
やはり、皆さんのようなトッププレイヤーなると、自分のコントロールがしっかりとできているんですね。
岩渕
時には対戦相手に腹を立てることもあれば、審判のジャッジに納得いかないこともありますよ。
中島
(笑)。あったねえ。
鮫島
ただ、サッカーでは感情を表に出すことも必要です。それが、熱のこもったプレーにつながることも少なくないですし、その熱量が他の選手に伝播していくこともありますから。
岩渕
自分で感情をコントロールすることも大切ですけど、チームプレーだからこそ、助け合えるところもあると思っています。感情的になってしまったときでも、チームメイトからの「冷静になれよ」というひと言で落ち着ける時もありますので。
横尾
そんなチームの皆さんと目指す、今後の目標を教えてください。
中島
今年こそは優勝を。昨年(2018年シーズン)は負けてはいけない時に負けてしまったり、引き分けたりという試合がありました。そういった勘所で勝利できるように、日頃から練習に取り組んでいきたいと思っています。
鮫島
今までの優勝チームの成績を見ると、リーグ戦での失点が年間で10点以内に抑えられているので、守備陣として10点以内に抑えて優勝を目指していきたいと思っています。
岩渕
リーグとカップ戦、そして皇后杯の3つのタイトルすべてを獲りにいきます。そのために、フォワードとして昨年以上にピッチにしっかり立って、得点でチームに貢献していきたいですね。
新しいシーズンが始まるたびに、タイトルを目指して努力を重ねられていますが、挑戦を続けられる原動力になっているのは何なのでしょうか?
中島
INAC神戸というチームは、ものすごく結果を求められる場所です。そこには責任やプレッシャーが伴いますが、だからこそチームの選手たちと一緒に優勝したいですし、INAC神戸に携わってくれている多くの人たちと優勝の喜びを分かち合いたいという想いが強いです。それがあるから頑張れるのだとも思います。それに、一つの目標を達成できると、次の目標が見えてきますから、その時々の現状に満足することはありません。また一人のサッカー選手としても歩みを止めようという気持ちを持たないこともプラスに働いているのかもしれません。
岩渕
大好きなサッカーを仕事にできているということは世の中的に見ても数少ないことですし、まわりには応援してくれる人たちがたくさんいて、一緒にやりたいと思えるチームメイトもいます。それですかね。
鮫島
昔から何回もサッカーをやめて他の道へ行こうと思ったこともあるんですけど、そのたびにサポーターや恩師など、たくさんの人たちに引き戻してもらってきました。INAC神戸に入るときも、怪我しがちだった私に「このチームでプレーしなさい」とクラブの会長が言ってくださって。サッカーを通じて、本当にいろいろな経験をさせて頂いてますし、多くの人との出会いもあって、自分の人生が豊かになっていると実感しています。だから、言葉にするとありきたりなんですけど、応援してくださる多くの方々の期待に応えたいし、恩返しをしたいという気持ちでやっています。
応援してくれる存在や、一緒に頑張れる仲間の存在が、皆さんを突き動かしているんですね。
横尾
本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

座談会を終えて

スポーツもビジネスも根本は一緒だと感じました。どちらも勝負の世界で目標を掲げ、達成する為に、どうしなければいけないのか? 自分たちに何が足りないのか? 競合分析・自己分析をし、個を磨き仲間と支え合いながら、強いチーム・組織を作って挑戦・成長していくことが軸だと思います。また、“誰かにやらされていると感じながらするのか?”“自分がやりたいこと、挑戦したいことだと思ってするのか?”自分自身が どう捉えて仕事やスポーツに取り組むのかは非常に大切なことだと思います。
商社のビジネスは一見華やかに見えますが、泥臭いことや細かな作業が大半です。偉そうなことばかり言っていますが、自分自身も行き詰まり、やらされていると感じたり、悩むこともありました。でも、仲間(上司・同僚)に助けられ今の自分があります。
日々、仲間や家族に対しての感謝を忘れず、日本市場を基軸とし、様々な国とのビーフビジネスの展開に挑戦したいと思います!
選手の皆さんにお会いして、世界で活躍されている選手なのに謙虚な姿に驚きました。でも芯が通っていて力強く、本当に皆さん素敵だなと思いました。
スポーツもビジネスも、個人とチームの目標を掲げ、周りを巻き込み、努力を積み上げて達成していくことは共通だと思います。また自分は、チームの人に仕事を任せたり後輩を指導するなどリーダーシップを取る上で苦手な部分があったので、お話は興味深かったです。
今は異動したばかりの部署で一から勉強の毎日ですが、人事総務部の立場で、若手社員のうちからグローバルにリーダーシップを意識できるような研修制度の見直しなどができたらと思います。今後、INAC神戸を全社で応援していくのを楽しみに、私も頑張ります!
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