DIALOG 06

アスリート×ビジネスパーソン 座談会2

挑戦に駆り立てるもの
そして、挑戦の先にあるもの
人は何故、挑戦をするのか?
困難があるとわかっていても
挫折を味わったとしても
立ち向かい続ける理由は何なのか?

障がい者として、アンプティサッカー*に挑む3名
女性広域社員として、総合商社に挑む2名
異なるフィールドながら難しいことに挑戦をする二者
本音の座談会を通して、挑戦の意義を紐解きます。
*アンプティサッカーとは:主に上肢または下肢に切断障がいを持った人々によって行われるサッカー競技。
兼松は2019年より、特定非営利活動法人日本アンプティサッカー協会とパートナーシップ契約を締結し、競技支援を行っている。
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MEMBER
  • エンヒッキ 松茂良
    ジアス選手
    FC ALVORADA所属。ブラジル代表、日本代表として、5度*のワールドカップに出場。日本にアンプティサッカーを持ち込んだ第一人者としても知られるスター選手。普段は、外資系金融機関で働いている。
    *ブラジル代表として1回、日本代表として4回
  • 野口 敦史選手
    FC ONETOP所属。幼い頃骨肉腫を発症。右足を手術後、後遺症が残る。その治療の過程で難聴も患う。自身のリハビリを支えてくれた理学療法士との出会いを機に、自身もその道へ。2016年よりアンプティサッカーをはじめる。
  • 久光 直美選手
    AFC BumbleBee千葉所属。右足に障がいを抱えながらも、スノーボードなどアクティブなスポーツを行う。おばあちゃん子であったことが、現在の仕事である介護福祉士を志すきっかけになっている。
  • 塩田 佳名恵
    所属部署 企画部開発・投資イノベーション室
    2015年入社
  • 波田 菜保子
    所属部署 食品第二部フルーツ加工品課
    2017年入社

アンプティサッカーとの出会い

エンヒッキ
私は、5歳の時に交通事故が原因で、右足を切断することになったのですが、10歳くらいの時に、たまたまブラジルがアンプティサッカーのワールドカップで優勝したという新聞記事を見て、競技の存在を知りました。生まれ育ったブラジルではサッカーが盛んだったので、杖を使いながら周りの仲間とサッカーをしていたのですが、競技として、選手としてサッカーに向き合おうと意識したのは、その時です。
野口
僕は、小学校3年生の時に、右足が骨肉腫という骨のがんを患いました。切断はしていないのですが、大腿骨の下半分を人工骨に入れ替える手術をしました。この時に入れた人工骨分は成長しないので、右足の長さは短く、切除された筋肉もあるため細いです。それ以来、装具と(左足と揃える為に)高さを付けた靴を使って生活しています。アンプティサッカーは、理学療法士の仲間に誘われたのがきっかけで知ったのですが、もともと体を動かすことが好きだったので、こういった話を、心のどこかでずっと待っていたんだと思います。即答で「やる!」と言っていましたから。
久光
私は、障がい者のスノーボード大会で知り合った義足ユーザーの方のSNSで、アンプティサッカーの存在を知りました。そこから、自分の住む千葉にもチームがあることを知り、見学体験に参加しました。それがきっかけです。
塩田
アンプティサッカーの魅力って何でしょうか?
久光
生まれつき右足に障がいがあり、物心が付いた頃から義足を使ってきました。激しく動くと義足を付けている部分が擦れたりして痛くなるのですが、義足を外してクラッチを使いながら自分の左足だけで走ることができることと、ボールを蹴ることができることが楽しいです。また、同じ障がいを持つ人と、スポーツを通じてつながりができることも魅力だと思います。
エンヒッキ
障がいに関係なく、サッカーが楽しめる・・・というか、自分に障がいがあることを忘れさせてくれる。そんな魅力がありますね。結構ボディコンタクトも激しくて、初めて観る方はきっと迫力に驚くと思います。
野口
確かに、コンタクトやスピード感、アクロバティックなプレーは観るスポーツとしても楽しめます。個人的には、老若男女・障がい者・健常者すべての方が楽しめるスポーツであることが、すばらしいと思います。
エンヒッキ
何より、ワールドカップという、とことん上を目指せる舞台もある。どうせやるなら一番にという想いが強いので、日本代表になってワールドカップに出る、そこで勝利するという目標そのものが、モチベーションになっていると思います。

兼松との出会い

エンヒッキ
ちなみにお二人はなぜ、今のお仕事に就いたのですか?
波田
総合商社を受けたのはエンヒッキさんのように、どうせやるなら上を目指したいという考えがあったからです。もちろん、世間的には女性には厳しい世界と言われているのは知っていましたが、困難と言われていることに挑戦したい!という気持ちがありましたので・・・。また、ビジネスをゼロから自分で創るチャンスが多い点や、多くの関係者を取りまとめるプロデューサー的な立ち位置であること、そして大規模なビジネスに携わりやすいことが魅力でした。
塩田
私は、旅行好きが転じて、大学を休学して世界一周旅行に行ったことがきっかけです。その道中で、日本という国の豊かさや、世界各地で影響力を持つ日本製品やその技術力の高さを知りました。そんな経験もあって、面接で「日本のすばらしい技術を世界に広げてみたい」と。
波田
兼松は、少数精鋭を体現していて「自分がこのビジネスを創った」と言えるような仕事ができると感じたことや、アットホームな雰囲気でありながら、自分の仕事を熱く語る社員さんが多かったのも決め手となりました。
塩田
私は、この会社なら「ニーズを基にパートナーを探して、新しいビジネスを思考して、実現する」という一連の事業創造の過程すべてに関われると考えたからです。新興国を中心に、必要なところに必要なものがないという現状を解消するために、自らビジネスを発掘し人々の生活を少しでも良くできたらと・・・。
野口
現在はどのような仕事をしているのですか?
波田
現在は、コンビニエンスストアに置いてある・・・もし、ご覧頂いたことがあるなら嬉しいのですが、冷凍フルーツの輸入販売です。海外で食材を探し、加工し、国内外でパッケージングして・・・というのをすべて弊社主導で行うといった、商社でありながら、メーカー機能を備えたビジネスを手掛けさせていただいています。実はこれ、まさに挑戦してみたかったことで、ビジネスを自分で創る一端でもあるので、とてもやりがいを感じています。
エンヒッキ
海外にはよく行かれるんですか?
波田
はい。基本的に輸入商売ということもあり、現地で商品の品質をチェックすることが欠かせないため、多い時は月に一度くらいのペースで行きます。
久光
どのあたりが多いんですか?
波田
ビジネスになりそうなフルーツや食品があるところなら、どこへでも行きます。それこそ、食は世界のあらゆる場所にあるので、どこにでもビジネスチャンスはあります。最近は、ベトナムに行きましたが、チームのメンバーは、中南米やヨーロッパなど、さまざまな国に行っています。
塩田
私は、面接の時の希望が叶い、電機メーカーや車両部品メーカー向けに電子部品を輸出入する部署に配属されました。メーカーなので当然と言えば当然ですが、お話をさせていただくお客様は理系出身者や技術者が多くて、文系出身の私には、とにかくわからないことだらけでした。そこから自分なりに勉強したり、時にはお客様や仕入先の方に教えていただきながら経験を積むことで、徐々に成果を上げられるようになり、取引先の方々と良い関係が構築できるようになってきました。2019年の7月から現在の部署に異動し、兼松グループが行う投資案件のサポートや新規事業の立ち上げに関する業務に携わっています。具体的には、各部門から挙がってくる投資案件について相手先の事業戦略や財務状況等を分析したり、場合によっては各関連会社に応じた投資戦略を策定させていただいて、一緒になって投資先やパートナーを探していくこともあります。兼松グループ全体のビジネス拡大をサポートしています。
野口
塩田さんの場合、まさに、新しいステージで、新しいことに挑んでいる訳ですが、新しいことをやり続けられる環境は、やりがいがありそうでうらやましいです。
塩田
入社以来4年にわたって電子部品の営業をしていたので、今回の異動は畑違いで不安もありますが、これまでとは違う軸の成長ができそうな期待感があります。何か、自分に新しいことが起こりそうで、楽しみでもあります。

挑戦の実態

久光
では、仕事をしていて大変なことは何ですか?
波田
海外出張に行かせてもらえる機会が増えてきたり、時差のある国に合わせて交渉を日中以外にすることが多いときは、やりがいのある仕事で嬉しい反面、体力的に大変と感じる瞬間は正直ありますね。
塩田
確かに、フィジカル的なタフさは求められると思います。業界柄、仕事柄、お客様や協力会社とのつながりがとても大事なので、食事や宴席も多くなり、体力的にキツいと感じることもありますし。
エンヒッキ
飲み会が多いとか、むしろ贅沢ですよ(笑)うらやましい。
塩田
実際に、飲みの席は楽しいですし、褒めていただいたり、労っていただくことも多いので、確かに贅沢かもしれないですね、仰るとおりです(笑)。
一同
笑い
塩田
投資に関する仕事に携わって感じるのは、社長や役員といった経営者と折衝する機会が多く、そういった方々の考えのレベルに自分が追いついていないということです。単純な知識はもちろん、会社や従業員を成長させよう、守ろうとする経営者視点の気概に触れると、もっと勉強しないといけないなと・・・そこがむしろ面白いところでもあるのですが。
波田
確かに、大変さと面白さは紙一重ですよね。何が正解かがわからない中で、関係者も多くて・・・でもビジネスを前に進めなくてはいけなくて。やっている時は大変ですが、やり終えた時の充実感は本当に大きいです。
エンヒッキ
わかります。自分は本当に負けず嫌いで、それこそ小学生とジャンケンして負けても悔しいくらいで(笑)。試合に負けて追い込まれているような状況って、むしろ奮起してしまう。厳しい状況の時こそ、負けたくない、勝ちたいって気持ちが湧き上がってくる。
野口
小さい頃から、松葉杖を使ってきたので、クラッチの扱いで負けたくない・・・自分も、そんな負けん気がモチベーションになっています。また、厳しい状況って、自分を成長させてくれると思います。自分は足元がそんなに上手い方ではなくて・・・ただ、その中で自分はチームのために何ができるのか?と、考える様になる。不得意なことがあってもその分、自分が体をはったり、考えて走ってフリーの選手を増やすことはできるなと。厳しい状況が教えてくれることってありますよね。
波田
久光さんは、大変だと感じることはありますか?
久光
例えば学校に入学して、「よーいドン」と同級生で一斉に競技をはじめる訳ではないので、自分の成長実感を比較できる人が周りにいない・・・というのはあります。また女性選手も日本全体で3人しかいないので・・・。
エンヒッキ
今、アンプティサッカーの競技人口は日本で約100人。女性はその内でたった3人です。アイルランドとウルグアイの代表チームには、すでに女性の代表選手がいますが、是非、久光さんたち3人も日本代表として活躍できるようになってほしい。女性だからできないなんてことはないし、前例もあります。
塩田
男女混成で競い合えるスポーツって、恐らく少ないですよね。親近感が湧きます。
波田
私たちと同じ状況といったらおこがましいですが、商社業界も女性はまだまだ少ないですからね。
野口
女子サッカーのなでしこジャパンもそうですが、20年、30年前とか僕たちがまだ子供の頃は女性がサッカーをやるという考えは少なかったと思います。それが今や、当たり前になって、ワールドカップにも出場している・・・。そこには先駆けとなる人が必ずいて、小さい子どもたちが感化されて、競技が育ってきたんだと思います。そんな先陣を、久光さんが今切ってくれていると感じます。
久光
アンプティの選手の皆さんって、こうやって話してくれるので、本当に優しいなって(笑)。やる気が出てしまいます。
一同
笑い
久光
こういう人たちの存在やつながりが、大変なことを乗り越える原動力になっているのかなと思います。
エンヒッキ
私にとってもつながりは大切です。そもそもアンプティサッカーが日本でここまで広がったのは、出会いとつながりのおかげ。数人規模だったものが、つながりの輪のおかげで、今や日本各地にチームができました。
波田
エンヒッキさんは、日本にアンプティサッカーを普及させた第一人者として知られていますが、何も無いところから、アンプティサッカーを日本でここまでの規模にするのは本当にすごいと感銘をうけています。商社においてもビジネスをゼロから創るというのを、一つの目標にしている人が多いですから、そのすごさがわかります。

挫折や困難が教えてくれること

エンヒッキ
でも、はじめて日本代表として出場したワールドカップは、全戦全敗のぼろ負け。皆が諦めてもおかしくない状況だったのですが、帰国後に周りの選手が、「いつか勝てるように頑張ろう!」と。・・・そんな、仲間の想いに支えられて、続けてこられました。大事なのは、結局は気持ち。諦めない気持ち。挑戦する気持ち。それが新たな挑戦の力になって、今につながっていると思います。
野口
実は試合の度に、上手くいかないこと、通用しないことなどばかりで、本当に心が折れています。じゃあ、何故辛いとわかっていても続けるのか・・・それは、ゴールを決めたり、良いアシストや守備ができたり、試合に勝った瞬間などの喜びをすでに知ってしまっているからなんです。またその喜びを味わいたいから挑戦していきたいんですよね。
久光
もともと、走るのが好きではないし、杖をついて走ると本当に疲れるし、練習も嫌だなって思う時もあります。ただ、頑張っていると、いいことがあるんです。親も喜んでくれるし、応援してくれる人ができるし、つながりもできます。そして、一緒に頑張っている人たちに勇気づけられる・・・だから続けるのかなと。お二人はいかがですか?
波田
商社は大変とか、女性には厳しいとか、そんな印象を持たれがちですが、実はそんなことはなくて、むしろ少数派の女性だからこそ相手の印象に残ったり、女性ならではの観点を仕事に活かせたりと、むしろメリットに感じることが多いと思っています。もちろん、男性女性関係なく辛いこともあって、はじめてサプライヤーの方が来日された時、自分が思っていた以上に英語がしゃべれず、話しかけることもできず、それがものすごくショックで、そんな自分が嫌だなって。ただ、私も皆さんのように支えてくれる先輩がいて、親身に励ましてくれました。また、エンヒッキさんのように負けず嫌いだったので、悔しさがバネになりました。できないことは怖いけど、めげずに積極的に話しかけるよう自分に課して・・・。もちろんまだ克服はできていないですが、一人で海外出張に行かせてもらえるようになったり、だんだんと良い方向に向かっていると感じます。
塩田
私も、波田と同じで「むしろ少数派の女性だから」ということで前向きに考えられることが多いです。女性だから損したなんて思ったこともないです。新しい部署になって環境が変わり、戸惑うことや歯がゆく感じることもありますが、続けること、積み重ねることで得られることの多さにやりがいを感じています。むしろ、日々成長を感じられる環境を楽しめているのかなと思います。
エンヒッキ
お二人ともポジティブですよね。
塩田
落ち込むときはとことん落ち込みます。お風呂で2時間くらいへこむこともあります。でも、次の日はもう頑張ろうってなります。
エンヒッキ
自分も似たようなことがあって、南米のラテン文化なのかもしれないですが、まあ、何とかなるでしょって。実際、なってきましたし(笑)。
波田
わかります。仰っていた通り、結局は気持ちだと私も思います。考え方が大事だなと。

挑戦の先にあるもの

エンヒッキ
「やればできる、何でも、誰でも」・・・こういう機会を頂く度に毎回言っているのですが、何事においても、一生懸命やった先でしか叶わないことがある。それは、気持ち次第。もちろん叶わないこともあります。ただ、行動を起こすこと、挑戦することで自分もお二人のように前向きになれますし、良いことも起こってきました。
野口
どうして、辛いとわかっていても挑戦を続けるのか・・・僕もこのお話を頂いた時に、挑戦の意義について自分なりに考えてみました。で、僕の場合、このアンプティサッカーにチャレンジしたことで、人生が変わったんですね。大げさかもしれないですけど(笑)。
塩田
どのような変化があったんですか?
野口
例えば、日の丸を背負ってプレーしているエンヒッキさんと一緒にプレーや練習ができたり、とにかく交友関係が大きく広がりました。全国にも色々な仲間ができました。アンプティサッカーに出会わず生きていたらきっと知らないままの世界だったかもしれません。チャレンジ一つで大きく人生が変わった。挑戦は、そんなすばらしいものを自分にもたらしてくれたと感じています。
波田
素敵な話ですね。
野口
お笑い芸人の松本人志さんの「ノーミスのままじゃノーポイント」という言葉が好きなのですが、失敗しないために挑戦をしないという選択もできると思うんです。その方が嫌な思いもしないし、楽かもしれません。でもそれじゃ成長しないノーポイントだと思うんですよね。今日の皆さんのお話を聞くと、やはり挑戦っていいなと改めて感じることができました。本当にありがとうございます。
一同
拍手
エンヒッキ
そう言えば、2020年にアンプティサッカーで女性だけの大会が試験的に開催されます。これも一つのチャレンジだと思うので、盛り上げていきたいですね。
久光
まだ、女性の競技者が少ないですが、これからですね。
塩田
実は、当社の女性広域採用実績が例年2~3名だったんですが、2020年は10名の女性広域社員が入社を予定しているんです。今後の女性社員の活躍が期待されています。ある意味、境遇が私たちと似ていますよね。私たちも入社時の想いを仕事の成果として実現できるように、挑戦を続けていきたいと思います。お互いに活躍の場が広がっていくといいですよね。応援しています。
一同
ありがとうございました。

座談会を終えて

選手の皆さんにお会いして、逆境にあってもすごくポジティブで意志が強い点に刺激を受けました。まずは何事も行動に移すこと、そこで失敗しても諦めずにもう一度挑戦することは、仕事においても大切なことだと思います。
今は異動したばかりで勉強の毎日ですし、ミスをしては反省するということを繰り返しています。経営判断に直結するような業務を担当しているので、自分の意見やミスが今後の方向性を左右すると思うとその責任の重さに不安になることもありますが、変に気後れしすぎず、若手らしく七転八起の精神で、会社の収益拡大に向けて挑戦を続けていきたいと思います。
この度は大変貴重な機会をありがとうございました。
身体に不自由な部分をお持ちでも、アンプティサッカー選手として一線で活躍されている御三方に共通しているのは、前向きさ・負けん気の強さだと感じました。これはどの分野においても挑戦し続ける人にとっては大切なことだと思いますので、御三方を見習って今後も挑戦し続けていきたいと感じました。
座談会は初めてでなかなか難しかったですが、こちらも良い経験になりました。改めてこのような機会を頂戴しましたこと感謝申し上げます。
DIALOG INDEX