PROJECT 04

食糧部門

TAKAAKI
YAMAMOTO
山本 貴明
食糧素材部 食品大豆課
2014年入社
理学部生命理学科 卒

唯一無二のクオリティーを求めて。
食品大豆輸出プロジェクトを発展させる。

CHAPTER 01

自らプロジェクトに携わりたい。入社以来の想いを実現。

2017年の秋、入社4年目の山本は米国オハイオ州に向かっていた。そのミッションは、兼松の食品大豆輸出プロジェクトを担う工場 KAPI(KG Agri Products Inc.)の運営手法を進化させ、プロジェクトの発展につなげることだった。

KAPIは元々、現地に工場を持つ日本企業がグループ事業の一貫として始めた案件であり、当時、撤退を含む事業の再構築を迫られていたが、この工場に大豆ビジネスの成長性を感じた兼松が2013年に買収して運営を継続してきたのだ。米国中西部のオハイオ州にて大豆農家と専属契約し、KAPI独自の栽培管理プログラムを実施。その大豆を食品大豆消費大国の日本向けに輸出・販売するビジネスを展開している。専属契約農家から収穫した大豆はこの工場で茎や莢(さや)等の除去を目的として選別され、選別を通過した大豆のみが食品加工メーカーに供給されるのである。

KAPIは全米で唯一の日本企業が所有・運営する非遺伝子組み換えに特化した食品大豆工場であり、新品種の研究開発部門を持つ。付加価値が高い独自の大豆品種が供給できる、競合他社にはない非常に高いポテンシャルを備えた工場だ。買収を経て、兼松としても様々な運営戦略を通じた事業拡大の機会を伺っていた。

そのKAPIの動向を密かに注視し続けていたのが山本だった。「自分自身でプロジェクトを手がけたい」という思いを胸にたぎらせながら・・・。だからこそ、KAPIプロジェクトに参画できるとわかった時は、不安感というより、期待感で一杯だった。

オハイオ州にあるKAPI生産工場の全景
CHAPTER 02

発展の糸口、そのヒントは現場に散らばっていた。

「実際に自分の目で確かめると、こうも違うのか?」オハイオ州に到着した山本は、そう感じた。「工場の機能を最大化し業績を拡大するためのヒントや、解決すべき課題が、現場には溢れていました」そうして、やるべきこと、成すべきことが徐々に明らかになる中、山本は具体的な行動を起こし始めた。

山本がまず着手したのは、工場内設備のリニューアル業務だ。「年季の入った設備ということもあり、最新の設備を導入することで、効率化を図りました。並行して、工場内設備のレイアウト変更や、機器の部品を変更することで、さらなる効率化や高品質化を推し進めました」

こうしたハード面に加えて、ソフト面へのアプローチも行った。特に改善の余地を感じたのは、販売先の日本と米国の意思疎通。山本は、工場長、製造担当、出荷担当の社員をはじめ、現地スタッフたちと日本側との意識の統一を目指し、話し合いを繰り返した。「米国にいると、当然ながら日本におけるビジネスの進捗状況は認識しづらい状況です。例えば、KAPIで生産した食品大豆原料が、どのように日本に届いて、どう加工され、どんな商品として販売されているのか。それが見えているようで見えていませんでした。そうなってくると、良かれと思って行っていた出荷の方法が、日本では思いがけない問題につながっていた・・・といったことも起こりうるのです。些細なことかもしれませんが、これまで見えていなかったものを、 一つひとつ“見える化”してマニュアルとして体系化し、理解を求めていくことも私のミッションの一つでした」

こうした働きかけに対する現地スタッフの反応は、当初芳しくなかったと山本は述懐する。「なぜ、そんな面倒なことをやらなければならないのか、という反発をあからさまに感じたこともありました(苦笑)。めげそうになる自分を奮い立たせながら、現地スタッフの言い分に真摯に耳を傾け、粘り強くこちらの方針や要望を伝えていく・・・初めのうちはそんな日々でしたね」しかし2、3カ月経った頃、風向きが変り始めた。「現地スタッフの方から私に相談してくれるようになったんです。ささやかですが、そんな明るい兆しに、自分のやっていることは間違いではなく、やっと前進している実感が持てましたね」

生産者会議に集まったKAPIの関係者
CHAPTER 03

大豆のブランディングを確立し、さらなる事業の拡大へ。

オハイオ州の滞在期間は半年。少し後ろ髪をひかれた思いもあったが、その間に自分にできることはやりきったという自負のもと、山本は日本に帰国した。そして、KAPIプロジェクトは今もなお、発展の途上にある。「事業は徐々に拡大していますが、まだまだ道半ばです。今後も現地とのやり取りを密にしながら、日本の食品加工メーカー、ひいてはマーケットが今求めているニーズへの対応力を磨き上げ、さらなる成長を目指していくつもりです」

帰国後に山本が注力しているのは、KAPIのポテンシャルを活かして、KAPIの食品大豆のブランドをさらに先鋭化すると同時に、新しいニーズを探索し、売買取引のレベルを上げることだ。「KAPIの特徴の一つは、自社で種子開発部門を持っていること。そのため消費者ニーズをとらえた品種開発を行うことができ、それが他とは一線を画す差別化につながっています。また、圧倒的な安心・安全を担保する独自の厳しい栽培管理プログラムも大きな強みです。これらの特徴をより際立たせるための取り組みの一つが、KAPIのブランディングです。KAPI独自のWEBサイトを制作し、プロモーションを図ったり、供給している食品加工メーカーの商品にKAPIの大豆ロゴをつけてもらったりと、少しずつ進めています」 数年後にはKAPIのロゴが付いた商品がスーパーに並び、消費者が手に取ってくれることを夢見ながら・・・。

さらに、大豆原料の輸出販売だけでなく、その他の収益の柱も作りたい。「数多くある大豆選別工場の中で種子を取り扱えるのは兼松だけ。この強みを活かさない手はありません。例えば、他の工場に種子を販売し、委託加工をさせて、ボリュームメリットを狙っていく・・・。いくらでもアイデアは湧いてきます」

山本は今、商売の上流から下流まで深く関わっているという手応えを感じている。「自分たちでつくった大豆を、自分たちで食品加工メーカーに販売し、商品の提案もできる。それがものすごく面白い。やれることの大きさに比例して達成感もとにかく大きい。この環境に身を置くだけで自ずとモチベーションが上がります。今後も、販売先や消費者のニーズの『今』を理解し、それをどこよりも早く開発に落とし込んで、ニーズに合ったものを世界中のライバルに先駆けて市場に提案するスキームをつくっていきたいと考えています」

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