PROJECT 05

車両・航空
部門

YUSAKU
SATO
佐藤 友作
航空宇宙部第一課
2011年入社(キャリア入社)
工学部電子情報学科 卒

他社に先駆けて日本市場に小型ロケットを。
それは、一人の商社パーソンの閃きから始まった。

CHAPTER 01

膨大な情報ソースの中で、
ひときわ眩かった宇宙ビジネス

「米国のベンチャー、Vector社 小型衛星専用に打ち上げる小型ロケットを安価で供給へ」その記事を見つけた時、佐藤は直感的な閃きと湧き上がる期待を感じた。

2016年夏、手掛けていた大型商戦が一段落した時期。佐藤は、宇宙・防衛領域で何か将来に向けたビジネスの種を撒きたいと強く願い、情報収集に当たっていた。その日も、普段通りに、世界のスペースニュースを扱うwebページをチェックしていた。そこで、数ある情報の中で、佐藤の目に砂金のように輝いて見えたのがVector社だったのだ。

「これまで衛星専用で打ち上げられてきたのは大型ロケットだけ。小型ロケットの実績はありません。一方、世界の需要は大型衛星から小型衛星にシフトしています。今後、小型衛星が一般化すれば、必ず小型ロケットの時代が来る。その予感にワクワクしました」

佐藤は早速、簡易的なマーケティング環境分析を実施。その上で競争力・発展性があると判断し、チーム内への情報共有を図った。同時に次の行動へ。直接、Vector社にビジネスの可能性を探るためのオファーメールを送ったのだ。するとその日のうちに、Vector社のCEO、ジム・カントレル氏から直々に連絡が入った。そのあまりに早いスピード感に、相手が世界トップクラスのビジネスパーソンであることを妙に納得させられた。ジム・カントレル氏は、米国のロケット・宇宙開発ベンチャーの雄として世界的に知られるイーロン・マスク氏が率いるスペースXの創業期メンバーであり、超一流の実業家でもある。佐藤は、その人物の目に留まったことになる訳だが、本人は謙遜する。「Vector社の製品に先見性を感じていて、非常に興味がある。ついては、日本のマーケットに展開できないかと、努めて簡潔にメールで訴えただけです。もちろん、熱意も添えましたが、そのシンプルさがかえって印象深かったのではないでしょうか」

CHAPTER 02

兼松の新たな試み。
シリコンバレー流ベンチャー企業との協業へ。

その後、Vector社との電話会議へ臨んだ佐藤は、Vector社から出資の話を持ちかけられることになる。しかし、兼松では、宇宙領域における出資の前例はほぼなく、また当時は投資収益モデルを追及していなかった。「まともにいけば許可は下りないだろう・・・」佐藤はそう考え一計を案じる。「ポイントは、投資は全面に出さず、いかに販売代理店業務を中心としたビジネスモデルを、説得力を持って描き、周囲の理解を得られるか。Vector社との協業による小型ロケットの販売、小型ロケットで使う部品の輸出、さらに新しいビジネスが生まれる可能性を訴え、それを成功に導くためには出資・代理店権獲得が必須なのだと。そんなロジックを構築しました」

一方、シリコンバレー流のベンチャー投資には特徴的な仕組みがある。スタートアップ間もないアーリーステージ(シード期)の企業への投資はリスクが高いため、割安で出資できるのだ。当然、佐藤はVector社がシード期のうちに出資を実行すべく動いた。「商権を他商社に先駆けて獲得するためには、スピーディーな意思決定や、Vector社が要求する期日までの社内稟議の完了が必要です。そこでチーム内、部課長の支援のみならず、車両・航空統括室、企画部、法務コンプライアンス部、審査部等、部門横断での協議を同時並行的に開始しました」

事業計画書を作成し、社内稟議の完了に向けた作業の真っただ中、佐藤はチームの先輩とともに、米国アリゾナ州に位置するVector社への訪問も行った。「より細かい情報を収集することで、説得力を持って事業説明ができるようになることが主な目的。もう一つは、Vector社の経営者が本当に信頼できる人たちなのかを確かめたいという思いもありました」

CEOのジム・カントレルは、佐藤たちを温かく迎えてくれた。「ジムは親日家で朗らかな人物。また、技術的バックグラウンドもある上に事業のセンスも抜群です。ここまで高いレベルで条件が揃っているベンチャーは希。実際に会ってみて、組む相手として間違いないと確信しました」

訪問を終えてホテルに落ち着くと、同行の先輩が何気ない一言をもらした。「まあ佐藤、ようこんな良い会社見つけて来たわ」佐藤は胸がじわりと熱くなるのを感じた。

Vector社のメンバーとの会食
CHAPTER 03

世界の宇宙産業を変える
小型ロケットビジネスが始まる。

Vector社から持ち帰った財務データ、現地訪問を通じた生の情報収集、さらに統括室からの献身的なサポート等による緻密なロジックの形成・・・。佐藤は熱意を共有し、チーム一丸となって案件を主導した。2017年1月、兼松はVector社のシード期に出資を実行。さらに2018年3月に独占的代理店契約を締結した。

実は、佐藤は日本向け代理店権交渉の過程でVector社から「アジアに強固なネットワークを持つ兼松にアジア全域も任せたい」と打診されている。しかし「小型ロケットはまだ開発途中。実績がない中で大きく始めるよりも、まずは兼松の車両・航空部門の駐在員がいる国に絞って着実にビジネスを育てていくべきとの考えに至り、インド・タイ・韓国の三ヵ国での独占的代理店契約を締結しました」

現在、Vector社の小型ロケットは、2019年春の商用化を目指して試作機フェーズに入っている。「Vectorの小型ロケットを用いれば、小型衛星をお客様が希望する軌道に、希望するタイミングで安価に打ち上げることができます。そのためスピード感や確実性を要求されるお客様の事業に自由度をもたらします。これまでの大型ロケットが抱えていた発射のための待ち時間や、軌道を選べない不便さを考えると、これは画期的なサービスです」

本格的に小型ロケットのビジネスが始まる商用化後をにらんで、佐藤は今、小型ロケットの知識をさらに積み上げている。「兼松には宇宙分野におけるビジネスの実績は豊富にありますが、小型ロケットビジネスはスタートラインに立ったばかり。これからギアを数段上げていく必要があるでしょう。小型ロケットが主流となる時代がもうそこまで迫っていますから」

小型ロケット視察時の一コマ
BUSINESS INDEX