DIALOG 02
D&I推進チーム 座談会
多様な人材が兼松をより強くする
受け継がれてきた“家族的社風”に一本の楔を打つ
現状に満足しない兼松の新たな挑戦
現状に満足しない兼松の新たな挑戦
MEMBER
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村上 英貴課長 人事部 人事企画課 兼 給与厚生課印刷営業、メーカー人事を経て、兼松にキャリア入社。給与厚生課に配属後、人事企画課にて海外人事を経験。入社3年目にはアメリカに駐在し、米国会社の本社移転などを経験。2019年に帰国し、現在は給与厚生課長と人事企画課長を兼任している。料理教室やワイン教室に通うなど、プライベートでも活動的。
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磯矢 知佐人事部 人事企画課 D&I推進チームリーダー事務職(現アドミスタッフ)社員として入社し、2000年より人事部にて海外人事、社会保険、採用をはじめ、人事業務を経験。2020年からは広域に転換しD&I推進チーム業務をリーダーとして取り組んでいる。趣味は旅行、ヨガ、薬膳、と多岐にわたる。最近興味があるのは、ふるさと納税と、パン・スイーツのお取り寄せ。休日は、家事育児に追われている。
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伊藤 光汰人事部 人事企画課2019年に入社後、人事部へ配属。海外人事の業務に従事し、現在に至る。旅行、サウナ、読書、たまにゴルフなど様々な趣味を持つ。休日は、朝ゆっくり寝られることに小さな喜びを感じている。最近は本格的なキャンプに興味を抱く一方で、スパイスからのカレーづくりにも挑戦しようと思っている。
CHAPTER 01
それぞれの経験から感じる、D&Iの重要性
本日は、お集まりいただきありがとうございます。2019年に発足されたD&I推進チームで活動するメンバーの皆さんに、活動内容をご紹介いただきたいと思います。よろしくお願い致します。それでは早速、チーム発足のきっかけをお教えいただけますでしょうか。
※D&I Diversity & Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)の略称。性別、年齢、障がい、国籍、価値観や働き方などの多様性を認め合い、それぞれの長所を活かすこと。
村上
私が磯矢さんの上司となって初めてのR&C(Review & Challenge:個人の目標管理)面談がきっかけでした。磯矢さんから「今後どのようにキャリアを積んでいけばいいのかわからないため、アドバイスがほしい」という相談を受けたんです。
磯矢
私は事務職(現アドミスタッフ)の社員として入社したのですが、特に産休・育休を終えて戻ってきた後に、年齢や社歴相応の貢献ができているのか?ある程度のスキルを習得した後キャリアの成長が止まっているのではないか?という焦りを強く感じるようになっていました。それで、村上さんに相談したんです。
村上
磯矢さんが入社された頃は日本の社会全体で結婚を機に退職される女性が多かったのですが、近年では、育児と仕事の両立を支援する人事制度が整ってきたこともあって、出産後も復職される女性が増えています。また男性の育休取得者も増えており、育児は女性だけのものではなくなってきています。
磯矢
そうです。今は、女性もライフイベントを乗り越えてキャリアを積んでいく時代に移行しつつある。だから若手の女性社員も、今後私が経験したような壁にぶつかるのではないかと思います。復帰してきた社員が、あきらめずにキャリアを積める環境を整えたいと思いました。
伊藤
私は発足時の初期メンバーではないので、当時の話をもう少し詳しくお聞きしたいです。村上さんは、ダイバーシティの重要性を感じていらっしゃったんですか。
村上
D&Iの重要性について身をもって感じたのは2015年からのアメリカ駐在の時だね。アメリカに赴任して私の上司にあたる人事部長は女性だったし、駐在時は様々なルーツを持つ仲間と働いてきた。2019年に帰国した直後、社員のうち女性の比率は3割強にもかかわらず、日本の本社では管理職の多くが男性ということが疑問に感じられた。この時漠然と、兼松という会社をより大きく強くするには、今までにない新しい着想が必要なんじゃないかと。
磯矢
そんな折に村上さんとのR&C面談があり、「これは会社全体の課題として考えるべきだ」と一致団結したんだよね。
村上
会社の風土から変えていかないといけない、ってね。そのためにはただ声をあげるだけでは何も変わらないだろうと感じていた。社会情勢に関して高い情報感度を持つ兼松の社員だから、D&Iを投げ掛ければ当然反対はしない。でも、実際に何か行動しようとすると、現実的に考えると難しいよね、となかなか腰を上げてくれないだろうと思った。だから、役員全員が出席する「経営会議」の議題として持ち込んだんだよ。
磯矢
経営会議には基本的に執行役員以上しか出席しないのですが、村上さんの強い訴えもあって私たちの参加を特別に許可していただきました。そこで、D&I推進の必要性についてプレゼンを行い、D&I推進チームは発足しました。
伊藤
お二人の熱意が、経営陣に届いたからこそ今は経営陣が積極的に行動してくださってるんですね。
村上
今年からチームに加わった伊藤くんは、D&Iの必要性についてどう捉えてる?
伊藤
私はお二人のように経営者目線ではないのですが・・・。兼松はフラットな会社である一方、それはある程度の同一化を求められた上でのフラットさなのかな、と感じる部分があります。いち若手の立場から、そこに一石を投じたいと考えています。総合商社として多様な部門でビジネスを牽引する兼松だからこそ、社員一人ひとりがもつパーソナリティなどの多様性を積極的に受け入れる必要があると考え、このチームに参加しています。
CHAPTER 02
真剣だからこそ、“まだまだ”
村上
ここまで活動してきた成果について、二人はどう考えてる?少なくとも社員に認知はしてもらえているという実感はあるんだけど。
磯矢
・・・難しいですね。女性の管理職登用を増やすためのステップとして、女性の採用と育成に向けた活動から始めて・・・具体的にはアドミスタッフの女性を対象とした、マインド研修の実施などです。しかし目に見える成果が上がっているとは言えないのが正直なところです。
伊藤
他にも、全社員にD&Iの第一段階としてe-learningを実施しましたね。受講してもらうだけでなく、私たちが社員の皆さんに気づいてほしいことにフォーカスを当てて、理解度テストを作って回答してもらったり、D&Iに関して皆さんの意見や考えを募ったりしてきました。磯矢さんは、これまで行ってきた活動を登山にたとえるなら、今は何合目にいると思いますか。
磯矢
・・・登ってすらいないんじゃないかな。まだ、靴のひもを結んでいるところだと思います。そもそも、この活動のゴールはどこに置くべきなのでしょうかね。
村上
D&Iの活動は、すぐに何か成果が出るものではないと思う。兼松には、D&Iを支える制度はすでにいくつもあるけれど、そういった目につきやすい制度があればいいかと言えばそんなことはないよね。そうじゃなくて、会社の風土ごと、社員一人ひとりの意識ごと変えていかないと意味がないと思うんだ。だから、磯矢さんの言う「まだ靴ひもを結んでいるところ」っていうのはよく分かるよ。
伊藤
こういう制度があるから、いい会社でしょ?ではなくて、制度があることに満足せず、D&Iが社員の中に溶け込んでいるっていうのが、本当の意味でのゴールなんじゃないかと思います。
磯矢
兼松は、人に対してあたたかい会社だと感じています。だからこそ、このままではいけないと思うんです。兼松は確かにいい会社です。でも「いい」の基準は、もっとアップデートできるはずです。私たちは、そこに挑戦したい。
伊藤
磯矢さんがおっしゃっているように、兼松は「いい人」が多いですよね。面倒見がいいというか。ですが、それが時に思い込みや押し付けになってしまっていないか、一度考える必要があると思うんです。社員一人ひとりのそういった自問自答が広がって、全員がD&Iチームの一員になる、というのが理想ですね。
村上
組織の中に仲間を増やしていくっていう感じが理想的だね。制度を整えて終わり、ではなくて、皆がD&Iを自分ごとだと感じられるようにしていきたい。そのためにはやっぱり、経営層や管理職層に対する働きかけが必要不可欠だと思う。私は個人的に、経営層や管理職層と話す機会があったらできるだけD&Iに関する話題を持ちかけるようにしているよ。小さなことだけど、それが意識改革に繋がって、兼松の文化として根付いていけばいいと思うんだ。磯矢さんはどう思う?
磯矢
D&I推進チームは、確かにチームとして存在していますが、あくまで黒子だと思っています。主役は、社員一人ひとり。それぞれの能力が発揮できるようにお手伝いしたいです。兼松が多様性を受け入れ、もっと自由になればきっと、会社としてさらに面白くなるのではないでしょうか。
村上
多様性を取り入れることに本気で向き合っているからこそ、「まだまだ」だと感じるよね。そして、だからこそやるべきことがまだまだあると実感する。
CHAPTER 03
D&Iにかける、熱意の根源
伊藤
最後に一つ、私から質問してもいいですか?この活動における、お二人のモチベーションの源泉は、どこにあるのでしょうか。ぜひ教えてください。
磯矢
私は、他者と異なる生き方をしているという意味で、自分も多様性を持っていると気づいたことが大きなモチベーションになっています。仕事の幅を広げたいという一社員としての意見を拾ってもらって、D&I推進チームに携わるというチャンスをいただきました。私がそうしていただいたように、誰もが持つよりいい職場や環境への提言や想いを拾っていける組織にしていきたいと考えています。
村上
役職者の任命や社員の異動など、組織としての意思決定が、年齢や性別などの生まれ持った属性に影響されているのではないか?自分自身のキャリアも含めて、人事であるからこその経験が私を駆り立てているのかもしれない。フェアな組織じゃないと企業の競争力は生まれないと思うんだ。だから、この活動を通して兼松を、個人の能力を開放できるような場所にしていきたい。
磯矢
それが優秀な人材の育成にもつながるのではないかと私も思います。ところで、伊藤くんは広域の男性というマジョリティの立場でこのチームに所属しているけど、何をモチベーションにしてこの活動を行っているの?
伊藤
会社という組織で見ると、私は確かにマジョリティです。しかし、組織の人事制度や風土を変えるために取り組む環境の中では、マイノリティであると感じています。確かに、兼松には若手の意見を受け入れてくれる風土があります。ですが簡単なことばかりではなく、受け入れてもらうには、相応の根拠や説得材料が必要なため、難しさがあるのも事実です。
村上
若手の提案が全て通るわけではないよね。企画を形にするには、若手の想いだけではどうにもならないことはあるね。
伊藤
そうなんです。でもそれが続いてしまうと、若手社員の個性も抑制されてしまう。D&Iにおいても、若手から声を上げ続ける必要があると思うんです。そのために、私がここにいると思っています。新人や若手社員の多様な考え方を吸い上げて、兼松の意思決定に反映させていきたいです。
磯矢
村上さんや私は、ある程度兼松の文化に良くも悪くも染まってしまっていると思います(笑)。だから、伊藤くんのような若手社員や、これから入社してくる人たちに「新しい考え方」を、兼松にもたらしてほしいと思います。
村上
D&Iの取り組みは、130年以上の長きにわたって受け継がれてきた“家族的社風”に一本の楔を打つというかなり大掛かりな挑戦だけど、これこそが、私たちに課された使命だと思う。大掛かりだから、この活動には痛みを伴う。だけど、痛みがなければ前には進めない・・・だからこそ信念と覚悟を持って、今後も力を合わせてこの活動に取り組んでいきたいね。
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