ビジネスフィールド
兼松は5つの事業セグメントを有し、その中で「ICTソリューション」「電子・デバイス」、「食品」、「畜産」、「食糧」、「鉄鋼・素材・プラント」、「車両・航空」の7部門の事業を手がけています。日常生活に欠かすことのできない食料品から、先端技術がひしめくIT技術や宇宙関連事業まで、世界中で幅広いビジネスを展開しており、その領域はまさに「食卓から宇宙まで」。
グローバルスケールで作り手と使い手を紡ぎ、シナジーを生み出すようなアイデアやプロポーザルを付与しながら、ビジネスとして昇華させ続けています。


ICTソリューション
兼松エレクトロニクス株式会社(KEL)を中心として、ICTを基盤にマルチベンダーの強みを活かした仮想化ソリューションやセキュリティビジネスを展開。情報システムのコンサルティングから構築、運用保守までワンストップで提供し、多様なニーズに応えている。

電子・デバイス
モバイルや電子関連の素材から部品・機器・装置にわたるバリューチェーンを展開し、幅広い分野で独自の付加価値を提供している。確かな技術と豊富なノウハウを活かし、IoTやAIといった新しい分野にも挑戦。これまでにない価値を創造し、社会の発展に貢献し続けている。
環境配慮型商材を通じたGXの推進
電子材料・電子部品といった半導体から、液晶・半導体装置などの大型機器、そしてITソリューションに至るまで、エレクトロニクス・IT産業全般に製品・サービス・ソリューションを、グローバルに提供しているのが電子デバイス部門だ。特にDX領域では、Beyond 5Gを見据えたハードウェア・ソフトウェアのポートフォリオを拡大し、SaaS、AIの普及拡大に合わせたビジネスを展開。日進月歩のデジタル技術を活用し、マーケットの発展に貢献している。
環境に配慮したものづくりは、もはや世界の潮流であり、多く分野でその模索が行われている。プリンター市場で、10年ほど水性インクジェットプリンターの販売を行なってきた知見を活かし、兼松が挑んだのが、環境配慮型ラベル(印刷時に使用する資材)の開発・販売だ。当プロジェクトのパートナー企業であるTBM社製「LIMEX Sheet」をベースに開発したラベルLIMEX Aqua Jet Labelは、環境性能とサーキュラービジネスそれぞれとの親和性の高さが特徴で、プラスチックや合成紙、紙の代替を促進。石油資源の使用量削減、温室効果ガス排出抑制、水資源の使用量削減が期待され、脱炭素社会に向けた取り組みの一つとなっている。すでに大手企業で採用され、商標取得も完了している本プロジェクトを足がかりに、環境配慮商材の活用…そしてGXビジネスをさらに拡大させていく。

食料(食品部門)
「食の安全・安心」を掲げ、原料調達から加工までの一貫供給体制を構築。農産物や水産物、コーヒー、飲料・酒類、調理食品など多様な商品を展開し、高品質と安全性を追求。さらに、持続可能な社会の実現を目指した事業にも取り組んでいる。
ウイスキーの熟成に欠かせない「木樽」ビジネスへ参入
食品部門では、フルーツ加工品や野菜加工品、水産品、製菓製パン原料、コーヒー豆、飲料・酒類など、多岐にわたる「食」の原料・加工品・商材を取り扱っている。世界各国にわたるサプライヤーの開拓、生産・加工現場における製造指導を通じ、安心・安全かつ高品質な原料・製品を供給することで、食品メーカーや加工メーカーをはじめとする厳しい顧客のニーズに応え続けている。さらには消費者が直接手に取るリテール商品も自ら開発し、コンビニエンスストアや量販といった小売りへの販売も拡大している。これら幅広い顧客のニーズ・ウォンツを原料・製品に反映する食のソリューションプロバイダーとして存在感を発揮している。
近年、世界的なJAPANESEウイスキーブームに対応する形で、日本国内における蒸留所の数が増加している。飲料・酒類課では、海外産ウイスキー原料(主にスコットランド、アメリカ、アイルランド産)を、国内の蒸留所へ供給するビジネスを長い間手がけており、国内外で多くの取引実績がある。そして今、力を注いでいるのがウイスキーをつくる過程で欠かせない「熟成用の木樽」を輸入し、蒸留所へ販売するビジネスだ。ウイスキーの味を決める重要な要素である木樽は、すでに世界で争奪戦の様相を呈している。その安定供給を実現するため、目下海外メーカーと代理店契約に向けた協議を重ねている。さらに今後、欧州、北米や成長著しいアジアマーケットにおけるプレゼンス向上のため、様々な取り組みを始めています。

食料(畜産部門)
業界トップクラスの畜産事業で培った長年のノウハウを活かし、原料供給から加工・販売まで、一貫した「畜産バリューチェーン」を構築している。この仕組みにより、安全・安心で付加価値の高い商品を安定供給し、多様なニーズに応えながら地域社会の生活の質向上を目指している。
食材の産地を広げ、食の調達を守っていく
畜産部門では、主に鶏肉・豚肉・牛肉といった食肉の輸入や加工販売を手がけている。また経済発展と共に食肉の需要拡大が顕著な中国やインドネシアといった国々へ、食肉の輸出も行なっていることに加え、さらにそれらの国においてサプライチェーンの構築にも積極的に取り組んでいる。兼松が日本へ輸入した食材は、外食、量販店・コンビニ等の小売、食品メーカーなど幅広い販路に流通されており、実は身近な存在とも言えるのが特徴だ。畜産部門は様々なサプライソースの確保・開拓を通じ、日本の食肉の安定供給に大きく貢献している。
2019年にウルグアイ産牛肉の日本への輸出が解禁された。ヨーロッパにおいて「世界一美味しい肉」と称されるウルグアイ産牛肉の輸入に、兼松はいち早く取り組んでおり、解禁前のウルグアイ産牛肉のマーケティングやサプライヤー開拓を地道かつ着実に行なった結果、兼松は日本における最初のウルグアイ産牛肉の輸入社となった。こうした「産地を広げ調達を守る」ビジネスが日本の食文化を陰ながら支えている。今後もグローバルマーケットにおけるサプライヤーへの出資や買収などさまざまな手段を精査しながら、食材の安定供給に貢献していく。

食料(食糧部門)
食品生産の基礎となる穀物や生産資材を世界から安定確保し、日本やアジアの食品メーカーに供給している。タンパク質需要の増加に伴う穀物需要拡大を見据え、気候変動や地政学リスクに対応しながら、安定供給と高品質の維持に取り組んでいる。
「ラーメン」を異国の国民食に…食の普及と文化創造
食糧部門は、創造的・革新的工夫と伝統的なチャレンジ精神をもって、世界の農業・食料・食生活に貢献することをミッションとしている。具体的な商材としては、コメ・麦などの穀類、大豆をはじめとする豆類、飼料原料、さらにはパスタやパンといった小麦粉加工品やペット関連製品まで多岐にわたり、これらを世界中のサプライヤーから調達し、国内外で構築された広大なネットワークで販売している。食の安定供給のみならず、安全・安心な原料・製品の開発・調達に加え、DXやGXに関連するプロジェクトも複数始動している。
世界各地で日本の「ラーメン」が注目されている。北米もまた、大きな成長が見込まれるマーケットであり、兼松は現地製麺メーカーとタッグを組み、その市場・文化の拡大に挑んでいる只中だ。そして、生産規模の拡大を見据えた製麺工場の新設や、日本の食品メーカーの技術を応用した生麺に食感の近い乾麺の開発など、さまざまな計画が徐々に形になり始めている。目指すのはラーメンをアメリカの国民食へと育て上げること。そして、北米での成功を経て、中米・南米へとビジネスを拡大していくことだ。人の健康と幸せをつかさどる「食」の文化創造を目指すこうした取り組みもまた、兼松の大切な使命となっている。

鉄鋼・素材・プラント
普通鋼・特殊鋼製品、エネルギーソリューション、化学品、産業プラント・インフラ設備、船舶など幅広い分野で事業を展開している。高い専門知識を持つスタッフが、環境に配慮しながら付加価値の高い商品やサービスの提供・開発に取り組み、持続可能な社会の実現を目指している。
GXソリューションの開発および社会実装
鉄鋼・素材・プラント部門の気候変動対策事業課では、GX事業を部門横断的に推進している。「再生可能エネルギー」「農業・食品」「素材」「静脈」をGX注力分野として設定し、兼松の既存商流を活用したビジネスモデルの付加価値化・差別化を、グループ一体で推し進める牽引役を担っている。その中の取り組みの一つが、スタートアップ企業との連携を通じた、新たなGXソリューションの開発およびビジネスモデルの確立である。
兼松は、名古屋大学発のスタートアップ企業「TOWING」とアライアンスを形成し、同社の高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を用いた、サプライチェーン全体のGX化に着手している。持続可能な食料システムの構築に貢献していくこの挑戦は、国内では「兼松アグリテック」、海外では米国の「KAPI」をはじめとした当社グループ・サプライヤーとともに社会実装へと、その動きを加速させている最中だ。このビジネスが軌道に乗ることで、農家の収益拡大、農業分野の脱炭素化、環境負荷の低い商品の市場供給と多方面への貢献が期待されている。

車両・航空
オートバイ・自動車部品や完成車両を扱う車両・車載部品ビジネスと、航空機や宇宙関連取引を担う航空宇宙ビジネスを展開している。高い専門知識と豊富な情報を活かし、これらの事業を世界規模で推進し、最先端の技術とソリューションでグローバルに貢献している。
先端技術と顧客基盤を紐づけた新規ソリューションビジネス
自動車・オートバイ・航空機、そして産業機械・工作機械といった幅広い領域の製品や商材を取り扱うのが車両・航空部門だ。そのカテゴリーは、人工衛星やロケットに用いられるような先進技術を用いた部品にまでおよび、副次的にグローバルスケールのネットワークやパートナーシップが構築されている。こうした兼松の強みである顧客基盤・協業ネットワークを、価値ある企業資産として積極的に活用し、新規ビジネスへつなげていく動きが加速している。
兼松は米国シリコンバレーに拠点を設け、先端技術やスタートアップの開拓を行なっている。そして、さまざまなビジネスを模索する過程で立ち上がったのがOTソリューション(*1)事業だ。前述の産業機械・工作機械の製造現場ではIoT化・DX化が進む一方で、マルウェアなどへのセキュリティ対策が急務となっている。事実、悪意あるサイバー攻撃で、稼働停止となった工場のニュースが世間を騒がせており、その損害は計り知れない。現在、OTソリューションの一環として、ものづくりの現場のセキュリティ強化・資産の見える化・故障予知といった提案を、兼松KGK、兼松エレクトロニクス、兼松の三位一体で推進している。兼松エレクトロニクスの商材を、メーカーをはじめとした兼松KGKの顧客アセットに展開し、兼松グループのお取引先に対する資産保護、セキュリティ向上を目指す。まだ産声を上げたばかりのこの取り組みだが、最終的には、セキュリティ分野に留まらず、工場のスマート化や生産性向上に寄与する包括的ソリューションサービスを創出し、展開していくのが青写真となっている。
(*1)一般的には製造業や社会インフラのハードウエアを制御・運用し、セキュリティや生産性を高めるための技術を指す